黒猫は元気だった。
元気すぎるほどに元気だった。
余程機嫌が良いらしく、鼻歌まじりにキッチンに立っている。
どうやら家政婦が止めるのも聞かず、本日の夕飯を振舞うつもりのようだ。
「・・オイ、何なんだこの異様な臭いは!」
黒の騎獣は情けない声をあげる。
そうだ。
臭いのだ。
何故一番近くに居る本人に臭いが分からないのか不思議なほどに。
その恐ろしい香りに毒された白の騎獣は横たわり、うめき声をあげた。
こいつはマズい。このままでは自分まで同じ目にあってしまう。
身の危険を感じた黒の騎獣は意を決してキッチンへ向かったのだった。
「コラテメェふざけんな!兵器でも作ってんのか!」
勢い良く扉を開けるとものすごい臭いが目に染みた。
けれどもここで引くわけにはいかない。
城主は留守だ。俺がやらねば誰がやる。
然し黒猫も応戦する。
「ぁぁん!?ちょっ、折角機嫌良くしてたのに誰かさんの顔見たら一気に萎えるんですけど!!
心配しなくてもね、アンタだけにはあげないから!
でもあたしは慈愛溢れる優しい乙女だからね。これでも食ってな!」
そう言って1つの袋を投げつけた。
【ワンちゃん大好き!ビーフジャーキーヒヨコムシ風味】
・・・・何時もならふざけんなと大騒ぎするところだが、
今日に限っては、それが申し分の無い豪華ディナーに思えた。
取り合えず保身の為、自分だけはそれを戴くことにする。
数時間後、黒猫が食卓に運んできた「物体」を目の当たりにした白の騎獣は、その場で卒倒した。
「さぁ、たーんと召し上がれ!
ぁ、でもDino君のぶんは置いといてね!」
黒猫は元気だった。
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