少々撮影で時間が掛かってしまい、伝言を返しきれなかった。
申し訳ない。
明日には必ず！


ああ、何の撮影かって？
来月発売の雑誌の表紙モデルをとオファーを受けたのでね。
俺にはこういうものは不向きなのだが・・・
頼まれては断れまい。


この手記を見てくれている皆様には特別にお見せしよう。
本当に気乗りしなかったのだけれどね。




















楽しかった。（つい本音が



そういえば来月以降のモデルも募集中のようだったよ。
君も表紙を飾ってみないかい？







・・・・スイマセン。

ブラッディーの様子がいつもと違うようだ。
嬉しいような、哀しいような何とも言えぬ表情で呆けている。




いつもは一人でもスピーカーのように喋り倒しているお前が、
まるで出会った頃のように黙りこくって、何を考えているんだい？

お前はこう見えて臆病なのに、いつも一人で処理しようとするのだね。





「・・・帰りたいのかい。」





思わず口に出してしまった。



黒猫は目を丸くしたかと思うと、直ぐに哀しげに笑う。



「あの頃に戻れるならね。
今戻ったところで・・・もう・・・」


搾り出すような声。
しまった。触れないでおくべきだったのかもしれない。
慌てて憎まれ口のひとつでも叩こうかと思ったその時、



「・・・大丈夫。
嬉しいんだよあたし。
あたしが生きていたことを、誰かが覚えてる。
もうあの頃には戻れないけど、気がついてくれた。あの子。
嬉しかった・・・」




彼女は笑っていたんだ。
綺麗な瞳で。




前に進むことを覚えたのかもしれない。
俺も、最近覚えたばかりなのだけれど。