小さな、リボンの付いた鍵がある。
俺はその正体を知っている。
書斎にある、古臭い机。
二段目の鍵が掛かった引き出し。
そこだけが黒猫の「秘密の場所」だった。
黒猫は鍵を首輪に通し、肌身離さず持ち歩いていた。
だがその秘密の鍵が今、足元に落ちている。
大事なそれを見つけるなり、すぐに手に取った。
・・・きっと探している。
が、そこで魔がさした。
お喋りな黒猫が誰にも見せず、秘密にしているもの。
それがとてつもなく魅力的な物に感じ、興味が湧いてしまったのだ。
悪魔の囁きにも似たそれに突き動かされ、周囲に気を配りながらも書斎まで遣って来た。
鍵穴に鍵を差し込む。
罪悪感は勿論有った。
だがそれよりも好奇心が勝ってしまう。
紙切れだ。
たった一枚のそれが一層興味を誘う。
そして俺は悟った。
この鍵は彼女が「わざと落とした」のだと。
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