「な ん だ その格好は」黒猫が冷たく言い放つ。
城主の服装はいつも通りであるのに、何故いきなりその様なことを言われるのか訳が解らない。
「そう、いつも通りね、
クッソいつも通りだね★」
一転、満面の笑顔で返答する黒猫。
その笑顔は背筋に冷たいものを感じさせる。
黒猫の機嫌を損ねるようなことはしていない筈。
懸命に記憶を辿るが、矢張り心当たりは無い。
「わかんないようだね?これだから南瓜は・・
ではこの超乙女であるブラッディーちゃんが教えてやろう!」
つくづく偉そうな猫である。
此方としても言いたいことは山ほどあるが、面倒なので言葉を飲み込む。
「何で!宴なのに!普段着で踊るんだYO!」
力いっぱい叫ぶ黒猫。
城主は一瞬呆気にとられたが、漸く彼女の言いたいことを理解した。
然し、宴の参加は必ずしも正装でなければならない訳ではない筈。
そもそも何故黒猫がそれ程憤慨するのか理解に苦しむ。
何と言い返そうか思案していると、面倒くささがうっかり顔に出てしまっていたらしい。
「何か文句あんのかコルァ!
一年に一度の宴よ?それをそんなハロウィン丸出しの格好で・・
季節感皆無だろうが!皆さんびっくりするだろうが!
あれー?まだ10月だっけvってなるだろうがああああ!
責任取れんのか!お前責任取れんのか!!
っていうかさ、折角いつもと違う服着れるチャンスじゃん!
今こそその暑苦しいマントを脱いでイメチェンをはかるべきじゃね?
これ超ナイスなアイディアだろ?あたし凄くね?」
―――もう何も言うまい。
一つ言い返すと三つも四つも返される気がする。
城主は半ば諦めにも似た気持ちで、正座をしながらはい、と小さく呟いた。
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