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まだ薄っぺらの書記


黒猫は不機嫌だった。

それというのも最近城に遣ってきた騎獣の片割れ、黒のメフィストとの折り合いの悪さ故だった。

同じ毛色同士仲良く、との城主の考えとは裏腹に。
気性の荒い者同士は中々にその兆しを見せない。

黒猫は今宵も愚痴を漏らしていた。

「ほんっっっとにあの性悪馬め!
片割れのファウストは紳士的でいい奴だってのに、一体何処で間違ったんだあのヤルォ!」

激しく喚く彼女を宥めるのもまた城主の務めだ。

「・・・ブラッディー、それは乙女に有るまじき言葉使いなのではないかな?」
「お黙り!だってもう違ぇもん!ミスターがあたしの身体をこんなオス猫なんかに作るからいけないのよぉおおおお!!」
そう言って黒猫は泣き崩れる。

「いや、それは君の魂が勝手に形作ったもので俺は・・・」
城主は怒りの矛先が自分に向かうのを恐れ、その先の言葉を呑み込んだ。

「ミスターはもうあたしなんかより綺麗な騎獣達にゾッコンLOVEなんでしょ!飽きたらポイなんでしょ!!」
・・・もう遅かったようだが。

「な、人聞きの悪いことを言わないでくれないか・・・!」
城主がいくら言葉を取り繕っても黒猫はにゃーにゃーと泣き続ける。
困った城主は真剣な面持ちで訂正する。

「・・・・お前が一番だよ、ブラッディー。」

その言葉を待っていましたとばかりに黒猫は泣くのを止め、
満面の笑みを城主に向ける。

「あたしもミスター大好き!
でもね、あたしが愛した男は只の一人だけだから!
ゴメンネ★」

・・・・やれやれ、またその話か。
城主は呆れながらも優しい笑みを浮かべた。


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