最後に会ったのは何時だっただろうか。
軽く二年以上は前の事であった気がする。
最後に会った時も、ろくに会話も出来ぬ侭に別れた記憶がある。
元々の性格から、会えずに寂しく思うことは無かったが、形だけとなった関係に疑問を持った。
娘や親しい友人に相談を持ちかけたこともあった。
次に会えたらしっかり話そうと誓ったが、今日まで会えていないのでそれも叶わない。
俺はそのうち、考えることをやめた。
それからは気楽だった。
複雑に考えずに日々過ごせば良かったのだ。
不真面目万歳。
このまま何事も無く日々が過ぎれば、俺は永遠に此処で何も考えず君を待っていただろうと思う。
だが、そうもいかなくなった。
7月吉日、俺たちの可愛い娘が婚約をした。
わざわざご挨拶に来て下さったのだよ。生涯最も緊張した瞬間だった。
相手とは初対面だったけれど、礼儀の正しい好青年なので何も心配は無いと思う。
勿論それはもう身が引き裂かれるような思いだったが、同時に息子も出来たという歓びの方が勝った。
君もきっと、彼を気に入るだろう。
彼らも8月末、旅に出るらしい。
支え合い前へ進むことを目の前で誓った二人を見て、俺は心を固めた。
―――この場所から、単身で旅立つことと決めた。
日程は未だに未定ではあるが、星屑の宴を一通り楽しんだ後に。
何を伝えれば良いか分からないのだけれど、これだけは。
今まで誠に有難う。
君と過ごした日々、本当に楽しかった。心から笑えた。
君の御陰で随分変われたと思う。勿論良い方向に。
だがこのままでは俺は此処で立ち止まってしまう。
ぬるま湯に浸かったように、何も思考せず、怠惰に、慢性的に。
それは一見心地良いようで、実に退屈だ。
自分勝手かもしれないが、退屈を嫌う俺はそれに気付いてしまった。
君はその昔、俺が居ないと生きている意味が無い と言ったけれど、それは違う。
君ほどの人物の存在価値が一つだけだなんて、考えられないことだ。
俺を気遣い立ち止まるくらいならば、一人で歩んで良いんだ。
君もそう考えるだろうと思う。
俺はもうすぐ、此処から旅立つけれど。
一度離れ再会を果たした俺達ならば、きっとまた何処かで会えるだろう。
その時はまたどうか、君だけが知る俺の名前を呼んでくれ。
心から有難う、大好きだったよ。
(
送り主の名前は魔法で読めなくされている)
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